教員メッセージ
テキスト科目

日本経済史は、現代社会を築き上げてきた様々な事象をについて歴史的に考え、「これから」を考える力を身に着けることを目的としています。バブル崩壊、オイルショック、高度経済成長、戦後改革など、いま私たちが生活する上で大きな影響を与えた歴史的なトピックがいくつもあります。こうした現象がなぜ起こったのか、そしてこの事実から我々は何を学び、今後にどう生かしていけばよいのか。この問いを追究するためには、短期的な視点ではなく、日本史全体を長期的に俯瞰して見つめ、金融や製造業、そして流通業に及ぶ幅広い分野で考察することが求められます。
本講義では、経済事象を歴史的な研究手法を用いながら解説していきます。歴史研究は、新資料の発掘や経済理論の活用によって、日々進歩しています。最新の学説に触れながら、歴史研究の面白さも体感していただければと思います。

- 著書
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- 『近代日本の工業化と企業合併-渋沢栄一と綿紡績業』(京都大学学術出版会、2022年)
- 『日本経済史』(石井 里枝、橋口 勝利 共編著、ミネルヴァ書房、2017年)
スクーリング科目

皆さん、工業に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。黒煙を拭き上げながら、トタン屋根をした工場でのベルトコンベアによる生産活動とざっくりと捉えていないでしょうか。これは一面では正しいのですが、工業はより奥深く、またより多様でもあります。工業は製造そのものに留まらず、モノやサービスの設計や調達、販売など付加価値の創造を伴う幅広い概念であり、さらに付加価値を巡るバリューチェーンによって現代社会の隅々まで影響が及んでいるからです。
そこで本講義では具体的なモノを想定しながらも、多様な付加価値、企業行動、イノベーション、その帰結としての工業化を受講者の皆さんと一緒に考えていくことになります。より具体的には、本講義は(1)組織に着目しながら、企業や市場、それを取り巻く経済についての考察、(2)経済学や経営学の実証成果や基本的な理論に基づいて、工業化のありようや企業行動の確認、(3)厳密に実証されていない点についても事例や歴史からの考察、といったアプローチから、多様な現代社会の理解とそこでの工業の理解に挑みます。

- 著書
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- 『中国の日系企業 蘇州と国際産業集積』(植田 浩史、三嶋恒平 編著、慶應義塾大学出版会、2021年)
- 三嶋恒平「新興国企業バジャジの進化プロセス:先進国企業との戦略的提携関係に至る戦略と行動」佐藤隆広編『経済大国インドの機会と挑戦: グローバル・バリューチェーンと自立を志向するインドの産業発展』白桃書房、11章(pp.333-374)
私の専門分野は、数理ファイナンスです。オプションなどの金融派生商品の価格付け問題や最適ポートフォリオ問題などを研究しています。株式投資や実際の金融取引に興味があるわけではなく、ファイナンスから発生する数学的問題、とりわけ確率論や関数解析に関する問題を研究対象にしています。
私自身は経済学部の教員でありながらかなり数学に偏った研究を行っていますが、ファイナンスは多様なバックグラウンドを持った人が活躍できる分野です。実際、ファイナンスの専門家(研究者だけでなく金融実務界で活躍している人も含めて)と呼ばれる人には、数学、経済学、計算機科学など様々な分野の出身者がいます。つまり、ファイナンスの専門家と言っても実に様々なのです。それぞれの専門家には、当然のことですが得意分野というのがあって、その特性を生かしながら日々勝負しているのです。
一方、日本には幅広い専門性を備えたファイナンスの専門家があまりおりません。これは、日本の大学制度では文系と理系とに始めから分けてしまうからだと思います。ファイナンスの問題を多角的に分析できる幅広い知識や技術を持った人が、日本のファイナンス業界には必要だと思います。

- 経歴
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2002年 東京理科大学理工学部情報科学科助手
2005年 慶應義塾大学経済学部助教授(2007年、准教授に名称変更)
2014年 慶應義塾大学経済学部教授 - 著書
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- Local risk-minimization for Barndorff-Nielsen and Shephard models, Finance & Stochastics, vol.21, pp.551-592, 2017 (with Y. Imai and R. Suzuki).
- Convex risk measures for good deal bounds, Mathematical Finance, vol.24, pp.464-484, 2014 (with M. Fukasawa).
- An extension of mean-variance hedging to the discontinuous case, Finance & Stochastics, vol.9, pp.129-139, 2005.