学部長からのメッセージ

文学部長 倉田 敬子

文学部長 倉田 敬子

「学芸の共和国(Republic of Letters)」とは、16世紀から18世紀におけるヨーロッパで近代科学を含むさまざまな学問、学芸が国を超えて発展し、新たな知の制度を築いたことを指します。このLettersとは文字のことですが、ここでは文芸よりももっと広い学問全体を示していました。慶應義塾大学文学部(Faculty of Letters)の「文(Letters)」も同様に、広く「学芸」(学問・芸術・科学)全般を包含する「知」を意味します。

文学部において、人類の文化活動の成果である文学や言語、芸術は重要な部分ですが、それだけではなく、哲学的な叡智の追究、人類の歴史的な探究、記録された情報に関する理論と技術の構築、社会の構造や機能についての考察、人間の心や行動についての科学的検証、さらには自然環境と人間との相互作用の解明など、人間と社会そして自然のすべての領域に、私たちの眼差しは向けられています。

福澤諭吉は、「自我作古(じがさっこ)」という言葉を残しています。これは「我より古を作す(われよりいにしえをなす)」と読み、前人未踏の新しい分野に挑戦し、たとえ困難や試練が待ち受けていても、新たな道を切り開く強い気持ちを表したものです。今、私たちはさまざまな意味で大きな変革の時代にいます。地球環境問題、社会全体のグローバル化、急速なデジタル化の進展など、従来までの考え方では対応しきれないことが数多く起きています。

文学部における環境、社会、人間に関する多様な広い視点からの研究教育は、このような変動が激しく流動化する社会や世界の動向に対して、大きな力を発揮できると考えます。さまざまな人々や社会がいろいろなものの見方や考え方をもつことを尊重する、という意思や姿勢こそ、未踏の領域に新たな道を構築するための基盤となるはずです。慶應義塾大学文学部は現代における「学芸の共和国」を目指しているといえます。

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